エニグモの共同経営者であるお2人が書いた本。
起業の前から、バイマ立ち上げまでの苦労、その後次々と「世界初」のサービスをリリースする過程がお2人の目線から書かれています。
博報堂という看板を捨て、困難な道をたどった様子がありありと描かれています。
本書を読んで初めて知ったのが、実はバイマのシステムを作ったのは私の地元、福井の会社だったということ。
なんかちょっと嬉しくなりました。
本書で印象的だったのは、須田さんが書かれている「法の精神」という箇所。
ちょっと長くなりますが、以下引用。
会社を始めて、自分の担当する業務領域が非常に増えた。広告代理店に勤めていた頃は、マーケティングや企画のことだけを考えていればよかったのだが、今では総務も法務も人事も全部やる。
そんな中で法律に接する機会が非常に増えた。そこで大きく学んだことに「法の精神」という概念がある。法には、それを作った背景があり、法を通して。実現したい社会や規範、道徳観などが存在する。それらをひっくるめて、要は、その法律が意図したことを「法の精神」と呼ぶようだ(教わったわけではないので、独自の解釈ですが)。
法律に違反しなければ問題ないという考え方もあるが、法律の抜け道を見つけて、かいくぐったとしても、「法の精神」に反していると、最終的には、なんらかの法律でペナルティが課せられたり、法改正が行われたりする。それで検挙された会社をたくさん知っている。
しかし、そんなことよりも重要なのは、そういう逸脱した行為は、最終的に世間の理解を得られないということだ。
ベンチャーにとっては、大手企業では手が出せない「法の抜け道」に多くのビジネスチャンスが眠っていることも事実である。
ときにそういう誘惑を受けることもあるが、しっかりと「法の精神」を読み解かないと、最終的に大きなことはできないと思う。
フェアなサービスを心がけないと、本当の意味でよい会社を作ることはできないと心から思うようになった。
フェアであることの重要性は、サービスや商品をいくらで提供するかという価格についても言える。
ネットの世界はグーグルが始めた価格破壊戦略の影響で、サービスを無料で受けられることが多くなっている。だが、これも行き過ぎれば問題を起こすと考えている。
価格破壊はありがたいことが多いが、一方で、その裏を読み解かないと手痛いしっべ返しもありうる。大問題になった耐震強度偽装問題もその一つのような気がした。
説明のつかない低価格には、どこかに歪みがあり、いつか破綻が生じ、長い目で見ると消費者が被害をこうむることになる。
ビジネスの世界でも、外部の会社に仕事を依頼するときに、限度を超した値下げを強要すると、先方のモチベーションの低下や態勢の手抜きなどで、アウトプットのクオリティが下がり、結局コストパフォーマンスが悪くなることはよくある。
商品やサービスのジャンルにもよるが、それなりのものにはそれなりの対価を払うべきで、やっぱりフェアバリューがある。
これは非常に大事なことですね。
改めて気づかされました。
謎の会社、世界を変える。―エニグモの挑戦
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